最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)423号 判決 1966年9月06日
上告人
成田源治
右訴訟代理人
岩沢誠
橘精三
被上告人
前川吉蔵
右訴訟代理人
古荘義信
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人岩沢誠、同橘精三の上告理由について。
論旨は、起訴猶予は一応の処分であって、後に起訴され有罪判決を受ける可能性は残されているのであるから、被疑者の死亡のように絶対的に有罪判決をうる可能性のない場合と異なり、起訴猶予処分のあったことを知ったからといって再審提起期間は進行しないものと解すべきであるのに、進行すると解し、上告人の再審請求を、期間徒過後提起されたものとして却下した原判決は、民訴法四二四条一項・四二〇条二項後段の解釈を誤った違法がある、というにある。
論旨主張のように、本件において有罪判決を得る見込があるとすれば、そもそも民訴法四二〇条二項後段にあたらないことになるから、有罪判決をえないかぎり再審の訴は却下を免れず、論旨はこの点においてすでに理由がないことになる。
しかし、原判決の民訴法四二〇条二項後段に関する解釈は正当である。なるほど、起訴猶予処分は一事不再理の効力を生じないから、事後起訴することは法律上妨げないとはいえるが、一且起訴猶予処分がされると、よほど特別の事情のないかぎり、その後に改めて起訴することはないのが通例であるからである。
論旨のいうとおり、公訴権が時効消滅するまでは、有罪の確定判決をうる可能性が絶無とはいえないが、万一有罪の確定判決があったならば、そのときにまた民訴法四二〇条二項前段の要件をみたしたとし再審を許容すべきである。
論旨は、いずれにしても採用できない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(五鬼上堅磐 柏原語六 田中二郎 下村三郎)